群雄割拠の時代に突入する飲食店業界の中で、何だかんだ言いつつもアンナミラーズの今後を心配する、片桐紀長による檄文(げきぶん)を再録します。
_ History(アンナミラーズ年表)、更新。
_ もはやこれで、国内に残るアンナミラーズは、わずか3店舗(赤坂、高輪、横浜ランドマーク)だけになってしまった。既にアンナミラーズに明日はないでも書いたが、今後アンナミラーズの店舗は減ることはあっても、再び増えることはないだろう。
(追記:その後、日本経済新聞に井村屋、外食事業を立て直し・アンナミラーズ出店再開へとの報道があったので、片桐の予測は外れる可能性がある。それはそれで、喜ぶべきことだが。)
_ 残る3店舗も、決して安泰というわけではないだろう。何しろ、問題点は山ほどある。
_ 料理の質、サービス、清潔さ、店舗の雰囲気。これが一定の水準を保つこと自体は、レストランサービスを提供する以上、いまや常識といえる。客の来店動機はいろいろあるだろうが、来店したものの「あれ? この店ってこんな程度なの?」と思わせるようなことがあった場合、その店に再度来店したくなるような強力な動機が無い限り、リピータにはならないだろう。
_ 外食が一般化した今日においては、フーズが美味しいというのは当たり前。オリジナリティがあり、かつ、また来店したときに「食べたくなる」ようなものでなければならない。
_ 昨年4月のグランドメニュー改訂(除高輪・お台場)の際には、思い切ってアイテム数を削り、その分フーズのクオリティを上げたということであった。しかし、突然グランドメニューがスカスカになってしまって、果たしてよかったのか。
「もともとウチは、パイが売り物ですから…」という弁明(?)を聞いたような気もするが、その後に、結局ランドマークではグランドメニューを充実させたものに一新しているのだから、やっていることに一貫性がない。
まぁ、今の高輪・ランドマークのメニューは満足できる程度のクオリティーにはなっているわけだが、時すでに遅しという感もある。(赤坂もメニュー変更になるとの噂がある。)(→追記:その後赤坂もメニューが変更された模様。)
そういえば、コーヒーもブランドが替わり(確かアート→キー)、以前ほど「薄い」わけではなくなった。ペーパードリップが嫌いという人でなければ、そこそこ行けるのではないか。それでも駄目ならエスプレッソorカプチーノを頼むか、シアトル系に行ってください。:D
_ パイについてはベークド主体の12種類に絞ってしまい(ソースのオプションを含めると18種類になるらしいか)、ブルーベリーシルクやココナッツカスタード、キーライムにダークチェリーといった人気のあるパイが、なぜか無くなってしまった。その後、2か月くらいの期間で交互に限定復活…という感じになっているようだが、本来定番で残すべきものでなかったのか。
穿った見方をするなら、今まで季節のスペシャルパイをシーズン毎に提供できていたのが不可能になったこともあり、わざわざレギュラーから外したのではないかとも思われる。もちろん、定番を減らすことによるコスト削減効果を狙っているのだろう(あるいは、それ以外の事情―製造ライン縮小?―があるのかもしれない)が、リピータの客にしてみれば、これほどふざけたことはない。
_ ポーション(ここでは、「取り分・分量」の意)の見直しも、お願いしたいところではある。昔ならいざ知らず、女性客をターゲットにしているのであれば、「うちはアメリカンサイズが売り物ですから」では通らないだろう。
先日、「新宿さぼてん」に入ったのだが、いろんな種類のものを少量づつ食べられるようなメニューがあったり、ごはんの盛り方が軽めになっていたり(あとでお代わり可能)と、女性客への配慮が感じられた。
また、以前ジロー系列の某店に行ったとき、さりげなくサラダのサジェストを受けた。で、量が多いのではないか?と尋ねたところ、ハーフポーションを半額で提供するとのことだったので、つい頼んでしまった記憶がある。分量を変えることによって、ビジネスチャンス(この言い方は嫌いだが)にもなるのである。
_ パイも、伝統とか製造ラインとかを考えるとサイズを変えるのは難しいのだろうが、たとえばキルフェボンのタルト位の大きさのものがあってもいいのではないか。まぁ、そのあたり路線変更が難しいからJOUVAUDをどうぞ…という話だったのだろうけど。
実のところ、今の1/7カット(チーズケーキは1/8カット)を1/8カット(チーズケーキは1/10カット)に変えることは可能(実際、催事販売では後者の小さいサイズで出る)だが、台所事情を考えると踏み切れないところか。
_ 残念ながら、今のアンナミラーズの接客レヴェルは、教育がしっかりしている全国チェーンに比べれば、遙かに負けていると言わざるを得ない。ランチでの客単価が1000円を切っている某イタリアンレストランチェーンのほうが、面白みこそ無いが、よほどきちっとした仕事をしている。料理のレヴェルは同程度でサービスが劣っている店に、倍のカネを払うほどの物好きな人は、そういないだろう。
なぜこれができないのか。
確かにバイトをやる側としては、一生懸命働いたところで給料が増えるわけでないし、だらだらやったほうが楽だろう。「すみませーん」と言われたらやればいい…位に思っているのかもしれない。しかし、対価をもらって働く以上、そんなことで済まされては困るのである。
思うに、現場できちんとした教育ができる人材が不足しているのではないか。あるいは、旧来のマニュアルが現状に適合していないのではないか…と思われる。見直しが必要だろう。
_ 例えばの話、客に対して責任ある対応ができるようホールスタッフが心がけていれば、以下のようなことは無いはずである。
_ 新川義弘氏も言っておられたが、「一部のお客様から100点もらうより、全てのお客様から60点以上もらえるサービス」が必要だ。最低限やらなければならないサービスを全てクリアした上で、それに何か上乗せされるサービスがあって、初めて客からリピータ、そしてロイヤルカスタマーになる。
_ クレリネスについては、当然できていてしかるべきものなのだが、それでも以下のようなことがあるようでは困る。
_ 開店時にはきれいであっても、その後の事情で何か生じることはあり得る。単にマニュアルの手順で「テーブルをふくときはこうやって…」と覚えているだけでは、見落とすことも多いだろう。常に、客の視線を想像しつつ対策をとるしかない。
_ テーブル周りがきれいになっていれば、それでいいというものでもない。業務スペースであっても、客席から見える部分はせめてきれいにしておいてほしいものだ。テーブル清浄用のダスターやクリーナーとかとグラスが仲良く並んでいる…というのは、どうかと思う。また、段ボール箱が積み上げてあるのが見えたりするのも、感心しない。
_ ここでは何回となく触れた、暇さえあれば店長に捕まって言わされたものでしたでも、「接客に限らず、マニュアルだけではシステムは定着しない」と指摘されている。
_ いわゆる覆面調査(最近ではサービス・インスペクターとか言ったりするらしい)は、店のQSCAの状態を一定の基準に基づいて「客の視点」から評価することで、その店の目標と現状とのギャップを浮き彫りにする…というものである。調査をやればそれで終わりというわけではなく、ちゃんと課題を解決しなければいけない。しかし、同店系列の場合、そのような努力がなされていたのかどうか。
_ このままで行けば、アンナミラーズが無くなってしまう可能性は否定できない。とはいえ、「選手に自分の思いを押しつけちゃあいけねぇよ」と工藤元司郎氏も言っているし(それは競輪の話(汗;))、今となっては なま暖かく見守ることしかできないわけだが。
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