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Opinion(アンナミラーズは、どこへ行く?)

群雄割拠の時代に突入する飲食店業界の中で、何だかんだ言いつつもアンナミラーズの今後を心配する、片桐紀長による檄文(げきぶん)を再録します。


Aug.13.2006(SU)―なぜ「サービスは Fifty-Fifty」であるべきなのか/サービスパーソンの「目的意識」とは

_ 新川義弘氏の主張に、「サービスは Fifty-Fifty」というのがある。このこと自体は、新川氏のオリジナルというわけでなく、トム=カーディナスの主張だったそうである。
参考。ちなみにカーディナスというレストランも、その名は彼の名に由来する。)

_

「日本人はシャイすぎる。日本人のサービスは下僕のサービス。イギリスの召使、バトラーのサービスの延長線上にある」

という主張には、違和感を持つ人もいるかもしれない。しかし、もしあなたがサービスパーソンだった場合、このような局面(日経レストランONLINE「これで解決!食の不思議」より「接客の心理学を探れ!」)ではどう反応するだろうか。

_ 上記例の局面では、明らかに客を怒らせてしまったウエイターの分が悪い。しかし、彼にとっては、こういう状況だったのではないだろうか。

_ つまり、日頃は「自分(達)は客より低い立場にある」という意識を持っているが故に、客に責任があると思った途端に、「自分(達)は客より高い立場にある」という意識が働いてしまった可能性がある。
ウエイターにしてみれば、それで客とのバランスを取っているつもりなのだろうが、客から見れば、下手に出るのが当然なはずのウエイターがいきなりデカい態度に出てきたのだから、当然こういうぶつかり合いになってしまう。
(↑という話は、もちろん片桐のオリジナルではなく、受け売りです)

_ 真によいサービスを提供できる店をつくりたいのであれば、やはり「サービスは Fifty-Fifty」でなければならない…というのが、トム=カーディナスの真意だったのだろう。サービスパーソンが、自分の仕事に誇りを持つことができなくて、果たしてよいサービスを提供し続けることができるだろうか。

_ ところで、客の方ははたして、そういうサービスパーソンに対して、ちゃんと敬意を払っているだろうか。

_ 今日、某店でのウェイティングのときに、店長が「喫煙席でしたら、すぐにご案内できますが」と尋ねて回っていた。彼にしてみれば、お客様をお待たせすることが申し訳ないので、あまり煙の濃いエリアでなくて少々我慢できるということであれば…ということであったのだろう。しかし、それに対してご丁寧にも「死んでも、やだ」と吐き捨てるように返した男性客がいた。いったい、何様のつもりなのだろう。


_ そういえば、某所でゆうすけさん(誰?)から、某店(?)の経営者になったらどうする?…という話を訊かれた(汗;)。まぁ、ホール回したことが無い人が経営者になるのもふざけた話だとは思いますので…とは言ってみたものの、思いつくことは無いわけじゃない。

_ こちらの読者であれば、ある程度想像は付くと思うが、要は、「また来たい」と思える店になるかどうか…ということ。
ファミレスとかの管理基準であるQSCA(Quality,Service,Cleanliness,Atmosphere)が保たれているというのはもちろんであるが、それだけでは不十分だと思う。

_ 結局のところ突き詰めていくと、新川氏の主張にもあるように、「パーソナルサービス」に尽きるのではないか。もちろん、どの店でも同じレヴェルのことができるわけではないだろうが、少なくとも客単価2,000円〜3,000円台以上を狙っていくのであれば、チャレンジすべきではないかと思う。


_ あと、サービスパーソンの「目的意識」についても言及しておくか。_

_ まずは、店として提供すべき価値は何か…ということを、明らかにすべきだろう。リッツ・カールトンでは、サービススタッフはクレドをどのように実践すべきかを常に問われる。
こちらでも何度か紹介したと思うが、少なくとも「暇さえあれば店長に捕まって言わされたものでした」で出てくる店では、それができていたはずなのである。

_ これも何度か紹介したと思うが、実際に駄目だった店を建て直した実例として、『これが実践!超お客様満足主義―経営品質の理念が会社を救う』がある。情報カードで、社長からパート・アルバイトに至るまで、情報を共有しようという取り組みがなされているが、これも一朝一夕にできたものではないことが、著書の中で紹介されている。結局のところ、当時意識が共有できなかった(というか、共有しようという意思がない)パート・アルバイトは、自ら脱落していったらしい。

_ とはいえ、そこまでの意識をパート・アルバイトが持てるのか。
あの新川氏をも感動させたという、居酒屋「てっぺん」のレポートに、そのヒントがある。

 同店のスタッフの離職率は大変低い。 「うちはお金を稼ぐことが出来ないバイトです。でも夢を持つことの重要性を感じ、自分自身が成長したことを感じることが出来ます」。

 最初から夢を持っているスタッフばかりではないが、働いているうちに夢をもつことの重要性を感じるようになる。これは店長や料理長が常に仲間のことを考え、可能性を引き出し、スタッフ同士も共に学んで成長するという姿勢ですべてにおいて取り組むからである。このスタッフ間のチームワークの良さは働く為の良い環境を作りだし、そのままその空気は接客に生かされている。



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