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Opinion(アンナミラーズは、どこへ行く?)

群雄割拠の時代に突入する飲食店業界の中で、何だかんだ言いつつもアンナミラーズの今後を心配する、片桐紀長による檄文(げきぶん)を再録します。


Apr.26.2006(WE)―まだだ、まだ終わらんよ!

_ ふと思いついて、『サービスマインドをたかめる物語』をとある飲食店勤務の方に差し入れしておいたのが、先週の話。

_ 今日その店に行ったら、ちょうどその方にお会いしたのだが、その方と話していてちょっと驚いたことがあった。

_ 本の感想を伺ったときに、いきなり「『脱力の力』って覚えていますか?」と訊かれた。…ええと、「自分の都合をお客様に押しつけるな」といったような話だったかな。

_ 「どうしても(ホールを)回すことに追われてしまい、お客様のことを考えていなかったりすることがあって、読んでぐさっと来ました」…というようなことを、彼女は言ったと思う。
名誉のために言っておくが、少なくともその店で、彼女の接客の素晴らしさには定評がある。その彼女でさえ、気付かないことがあったとは。

_ もっとも、ある程度キャリアを積んできた人の方が、むしろこのような落とし穴にはまっているのかもしれない。ホールをちゃんと回せることによって飲食店の経営は成り立っているわけだし、売上=客単価×客数(←客席数×回転数)だから、混雑時であれば特に、ホールを回すことに注力するだろう。それ自体は間違っていない。

_ だからといって、客が声をかけようと思ってもホールスタッフが全然気付かなかったり、何か尋ねたときにつっけんどんな対応をされたらどうだろう。「忙しいから仕方ない」というのは店の都合だが、客にしてみればそんなことは関係ない。もし不快な思いをしたなら、次回は他の店に行こう…ということになるかもしれない。

_ ちなみにその店は、ここしばらくはサービスに関してあまり良い評判を聞かなかったので、正直駄目かもしれない…と思っていた。しかし、また立て直す機運が生まれるのであれば、しばらく見守っていてもいいかと思う。


_ 「サービス」という価値がビジネスになるときという一文で、フードスタジアム編集長は「レストラン『サービス』をテーマにしたイベント、それに便乗したビジネスが大流行である。」「サービスはあくまで『客のため』であってほしい」と注文をつける。これまた正しい指摘だとは思う。

_ しかしながら、我が国における(この言い方は嫌なんだが)サービスパーソンの地位は、確固としたものではない。GDことグローバル・ダイニングのサービスは、徹底した実力主義に基づく報酬制度とセットになったからこそ実現したともいえる。
元GD・新川義弘氏の講演は素晴らしかったが、むしろ、同日そのあとの懇親会会場の片隅で、どこかのチェーンの店長達とおぼしき方々が「そんなこと言ったってなぁ…」とお互い愚痴っていたのを観たことが、印象に残っている。

_ たとえばの話、『リッツ・カールトンが大切にする サービスを超える瞬間』や、新川氏の『愛されるサービス』を読むと、素晴らしいサービスの数々が語られている。しかし、実際にこの本を読んだ後に、自分が置かれた立場を考えると、どれだけのサービスパーソンが絶望してしまうことだろう…と私はおそれる。どこの会社でも、思いつきでリッツやGDの真似をできるわけがない。

_ 新川義弘氏は、「レストランに楽しみに行こう!」「エンターテイメントこそが、外食の価値だ」と主張する。だからこそ、そのエンターテイメントを支える方々に夢を持ってもらいたい…という思いから、コンテストに協賛しているのだと思う。

_ 感動できない人が、感動を与えることができるだろうか。


_ サービス関連でもう一つ。閉店時間を巡る、ある出来事/店とお客は「大人の関係」でありたいものです日経レストラン)には正直驚いた。業界誌の編集長ともあろう方が、店に対し客の都合を一方的に押しつける…というところが、日経BPらしいといえばらしいが。



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